自主自立の精神と「真の文武両道」が切り拓く未来——行ける学校ではなく「行きたい学校」へ

国公立大学や難関私立大学への高い進学実績を誇りながら、部活動加入率は90%を超え、学校行事にも並々ならぬ熱量を注ぐ都立南平高校。生徒たちはどのようにして主体性を育み、自らの希望する進路を実現しているのでしょうか。今回は、合同会社キャンパス代表の千葉が、同校の水島伊彦校長先生を訪問。南平高校が大切にしている「自主自立」の精神から、これからの時代に必要な力、不安を取り除く手厚いサポート体制、そして「真の文武両道」の裏側まで、教育現場のリアルをたっぷりと語り合いました。
〜教育対談開始〜
「ノーチャイム」と「自主自立」。生徒が主役の熱気あふれる学校生活
千葉本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。私は以前、青梅や八王子の学習塾で勤務しており、これまでも多くの生徒を南平高校様へ送り出してきました。
昔から、国公立大や難関私大への高い進学実績を出されながら、スポーツや学校行事にも全力で取り組む「文武両道」のイメージが強いのですが、実際の学校のご様子はいかがでしょうか。
水島校長ありがとうございます。本校を志望し入学してくる生徒のほとんどが、四年制大学進学を見据えて入学してきます。ただ、「勉強だけ」ということではなく、「いろいろなことに挑戦したい」という思いを持って入学してきてくれます。
ですので、部活動に関しても強制しているわけではないのですが、加入率は90%を超えています。どの部活も全力で取り組み、しっかりとした実績も出しています。
千葉90%超えは素晴らしいですね。学校行事の熱量も高いとお聞きしました。
水島校長はい、本当に生徒たちは一生懸命やっています。5月に体育祭、6月に合唱コンクールがあり、秋には文化祭があります。例えば3年生になると1・2時間目が自由選択の授業となり、1・2時間目に授業の無い生徒がいます。
普段は自習スペースで自習をしているのですが、体育祭前の4月は授業がない生徒たちが自主的に集まって応援団の練習をし、体育祭が終わると合唱コンクールに向けた練習が始まります。
そして合唱コンクールが終わるとパッと切り替えてまた勉強に移ります。夏休みも、文化祭に向けてほぼ毎日学校に来て準備を進めています。
勉強も部活も行事も、全力で頑張る生徒が非常に多いのが本校の特徴であり、そうした生徒たちを育成していくことが我々の使命だと考えていま
す。
千葉先ほど校内を拝見した際も、すれ違う生徒の皆さんが元気に挨拶をしてくれて、とても気持ちの良い印象を受けました。
水島校長挨拶に関しても、教員が強制してやらせているわけではないんです。先輩たちが挨拶している様子を見て、自分たちもそうしていこうと自然に挨拶するようになっていくんです。
すると挨拶することの気持ちよさを生徒たちが知って、自発的に気持ちのいい挨拶をするようになっていくんです。 本校には開校以来40年以上続く「自主自立」と「ノーチャイムによる時間管理能力の育成」という精神があります。
校門から続く階段に「グノーティ・セアウトン(汝自身を知れ)」という古代ギリシャの格言が掲げられているのですが、まさにそれが精神の基盤になっています。体育祭や文化祭の閉会式・表彰式なども、教員ではなく実行委員会の生徒たちが自ら企画して運営しているんですよ。
我々教員は、生徒たちの活動を見守りながら、必要な場面では支援やサポートを行い、生徒の自主性を生かす指導を心がけています。
単に生徒に任せるのではなく、自ら考え、判断し、行動する経験を積み重ねることで、自分自身の人生を切り拓く力を育てたいと考えています。
AI時代に求められる「自ら課題を見つける力」とグローバル・理数教育
千葉行事の企画運営まで生徒自身が行っているのですね。そうした「自主自立」の経験は、先行きが不透明と言われるこれからの時代を生きる上で非常に重要だと感じます。
校長先生は、今の子どもたちにどのような力が必要だとお考えですか。
水島校長第一には、「自ら課題を見つける力」です。知識や技能を身につけることは大切ですが、これからの時代はその知識や技能をどのように活用していくかが重要になってきます。
AIに聞けばすぐに答えが見つかる時代だからこそ、自ら課題を見つけ、その解決に向けて身につけた力をどのように活用していくのかを考え行動する力が一番大事になってくると思います。
また、今後さらにグローバル化が進む社会で活躍していくために、多様な文化や価値観を持つ人たちと協働して一つの答えを導き出す力を身につけさせることが大切だと考えています。
千葉その力を育むために、独自の取り組みなどもされているのでしょうか。
水島校長ここ数年、国際交流には非常に力を入れています。フィリピンや韓国の高校とのオンライン交流や、大使館訪問などを実施してきました。
さらに、東京都教育委員会の都立高校生等の海外派遣研修(グローバル・ビジット)を通じて、昨年はエジプト、今年はインドネシアへ生徒を派遣しました。
これをやって本当に良かったと思うのは、帰ってきた生徒たちが本当に大きく変わっていることです。
自信なさげに出発した生徒たちが、胸を張って目を輝かせて帰ってきました。
現地で刺激を受け、自分の力のなさを痛感し、「自分をさらに高めるためにどうしたらいいか」を考え、新たな行動を起こす生徒が出てきました。
中には、自ら立てた問いについて、他校にアンケート協力を依頼したり、大学の聴講生となって探究活動を深化させたりする生徒も出てきました。
本校では、海外研修に対するニーズも高いため、来年度からは本校独自での海外派遣研修の計画を進めています。
千葉素晴らしい成長ですね! また、理数教育にも力を入れられていると伺いました。
水島校長はい。本校の学力層ですと文系志望が多くなりがちですが、これからの時代は理数系の力が非常に大切です。入学時は理系・文系志望が半々くらいなのですが、「数学が苦手だから理系を諦める」ということがないよう、英語と数学で習熟度別授業を導入しています。
また、理系の楽しさやすばらしさに触れてもらうため、日本科学未来館での探究活動を行ったり、希望者を募って博物館や横須賀にあるJAMSTEC(海洋研究開発機構)への見学会を行ったりと、知的好奇心を刺激する取り組みも行っています。
千葉塾で指導していても、「教科が苦手だから夢を諦める」という順序になってしまっている生徒をよく見かけます。本来は逆ですよね。
「やりたい夢を叶えるために頑張ろう」という好奇心からのスタートと、それを支える手厚い習熟度別のルートがあるのは、とても魅力的だと改めて思いました。
「わかるからできるへ」。きめ細かなデータ分析が生む高い進学実績
千葉実は、校長先生のご挨拶文にあった「わかるからできるへ」というフレーズに大変共感しました。私たちの学習塾のモットーも「わかるをできるにしよう、やる気を合格に変えよう」なのです。
ただ「わかる」だけではなく、自分で使いこなせるところまで引き上げることが重要ですよね。
水島校長本当にその通りです。ただ「わかる」だけで終わってしまっては、それこそAIに任せればいい話です。「わかった」ことをいかに駆使して課題解決に向かっていくかが大切です。「”わかる”から”できる”へ 生徒の心に火をつける授業」を目指して生徒の学力向上に向けた授業改善に取り組んでいます。
それと同時に、進学指導研究校・進学指導等の充実事業推進校として取り組んできたノウハウを最大限に生かし、教員が組織的にきめ細かく模試の分析を行っています。
「この生徒はどの教科のどの分野が課題なのか」など、生徒一人ひとりのストロングポイントやウィークポイントを教科担当・担任を中心とした教員全体で共有し、保護者を含めた三者面談でも「今は合格圏に届いていないかもしれないけれど、この科目のこの分野を克服すれば、合格判定はこれだけ上がるよ。過去の先輩たちも今の判定から志望校に合格していった人はたくさんいるよ。」と具体的な数字を示しながら指導する体制が整ってきました。
千葉具体的な数字に基づく的確なアドバイスがあるのですね。
水島校長はい。そうした積み重ねが実を結び、生徒一人ひとりが希望進路を高度に実現できるようになってきていて、今では国公立大学に20名前後、難関私大で25~30名弱、GMARCHレベルでも150~200名を超える合格者を出せるようになってきました。教員一人ひとりがしっかりとノウハウを身につけ、進路指導部が的確なサポートをしてくれています。
プールやマラソンへの不安も「プロの指導」で乗り越える
千葉生徒さんの中には、南平高校様のレベルの高い文武両道についていけるか不安を感じる子もいると思います。例えば、立派な屋内プールがありますが、水泳が苦手な子へのサポートはいかがでしょうか。
水島校長本校は屋内プールですので5月から10月くらいまで水泳の授業があります。プール棟全面に網戸をつけているので虫も入って来ないなど環境は非常に良いのですが、最近は小中学校であまりプールに入らないため、水泳に不安を感じて入学してくる生徒は確かにいます。ただ、水泳は必修ですが、無理強いさせるような指導はしていません。
また本校は東京都教育委員会から「エンジョイスポーツプロジェクト」の指定を受けており、プロのコーチが年に数回、授業の指導に来てくれます。教員の指導と専門コーチのサポートを合わせ、泳げなかった生徒が泳げるようになったり、得意な生徒は専用のレーンでバタフライでどんどん泳いだりと、個々のレベルに応じた指導をしっかり行っています。
千葉プロのコーチが入るのは心強いですね。
水島校長はい。さらに2月に行われる1・2年生のマラソン大会でも、このプロジェクトの一環で陸上の専門家を招き、「疲れずに長距離を走る方法」を丁寧に指導してもらっています。
マラソン大会は昭和記念公園で実施するのですが、最初は憂鬱そうな顔をしていた生徒たちも、ほとんどが完走して帰ってきます。
不安な部分もしっかり課題解決できるような取り組みをしているので、心配なく入学していただきたいですね。
経験豊富な教員が愛情を持って一人ひとりをよく見てくれているので、校長としても安心して生徒を任せています。
民間学習塾に期待する役割と、「ありのままの生徒」を見せる学校見学会
千葉私たちのような民間企業や学習塾に対して、南平高校様が期待されている役割などはございますでしょうか。
水島校長中学生の進路選択において、学習塾の先生方が与える影響は非常に大きいと感じています。だからこそお願いしたいのは、「今の学力がここだから、君はこの学校だね」という指導ではなく、先ほど千葉さんがおっしゃったのと同じように「行きたいところがあるなら、そこを目指して頑張ろうよ」という指導を行っていただきたいと思います。
毎年少なからず「やっぱりちょっと違った」と進路変更をしていく生徒がいますが、それは生徒にとって一番不幸なことです。ミスマッチがないような進路指導をお願いしたいと強く思っています。
千葉おっしゃる通りですね。生徒さんを直接拝見し、学校のリアルな雰囲気を知るチャンスはどのようなものがありますか。
水島校長夏に開催している学校見学会は、実は教員は一切しゃべりません。10~20人ほど中学生や保護者の方が集まったところで、部活動などに加入している生徒たちが校内を案内します。
教員がついていかないので、生徒たちからありのままのリアルな話を聞くことができます。南平高校にとって一番の自慢である「南平の生徒たち」を見てもらうのが一番だと考えています。部活動見学や体験も含め、ぜひご自身の目で見て、感じて判断していただきたいですね。
勉強と部活は「分断」されない。探究としての部活動が受験の原動力に
千葉今回お話を伺って、私の中でとても大きな気づきがありました。これまで「文武両道」というと、勉強は勉強、部活は部活として明確に分けて「二つのものを両方頑張る」というイメージが強かったんです。
しかし南平高校様では、そうではないのですね。最初から分けていないからこそ、受験でもしっかり結果を出せているのだと腑に落ちました。
水島校長千葉さん、まさにそれです!部活動や学校行事というのは「探究活動」そのものだと思っています。
好きなこと、やりたいことを他者と協働しながら深めていく活動です。決して勉強と別々のものではなく、部活動や学校行事に真剣に取り組む過程で培われる主体性や協働性、困難に挑戦する力、集中力、忍耐力、そして切り替えの早さが、自己肯定感や自己有用感となり、受験という未知の目標に向かって突き進む原動力になっているのです。
千葉行事や部活で身につけた力が、そのまま受験に向かう力に直結しているのですね。
水島校長その通りです。学校行事は3年生の9月第1週の文化祭で終わりです。そこまで全てにおいて全力でやり切り、その後スパッと受験勉強に切り替えて結果を出せるのは、その「分断されていない学び」があるからです。
全てをひっくるめて成長し、次の進路へ向かって進んでいく。これこそが南平高校の強みであり、本校の考える「真の文武両道」なのです。
南平高校では今年度から「学びを力に世界を広げ 南平で拓け未来」を教育活動の指針として掲げ、取り組んでいます。生徒たちには、勉強も部活動も学校行事も、すべてを自らの成長につなげながら未来を切り拓いてほしいと考えています。
千葉この魅力は、パンフレットの文字面だけでは絶対に分かりません。私たち学習塾も、そうした本質的な強みをしっかりと生徒や保護者の方々に伝えていきたいと強く感じました。
中学生と保護者の方へ——「行ける学校」ではなく「行きたい学校」を選ぼう
千葉最後に、これから志望校を選ぶ中学生や、その保護者の方に向けてメッセージをお願いできますでしょうか。
水島校長繰り返しになりますが、「行ける高校」ではなく「行きたい高校」を選びましょう。人間は、「ここに行きたい」という明確な目標ができれば、それに向かって努力を続けられるものです。逆にそれが無いと、人間は弱い生き物ですから、どうしても途中で息切れをしてしまいます。
まずは、心から行きたいと思える学校を見つけましょう。そのためには、一つの学校だけでなく、複数の学校に実際に足を運んで、見て、感じてください。私学には私学の良さがあると思いますが、都立には都立にしかない良さがあります。 ご自身の目で見て、感じて、志望校選びをしていただければと思います。
南平高校は、周りが全てにおいて頑張る仲間たちなので、「よーし、自分も頑張ろう」と思える学校です。また、自らも努力しているからこそ、頑張り過ぎて疲れてしまった人や弱気になってしまった人の気持ちを理解し、優しく接することのできる生徒が非常に多い学校です。
そのような環境の中で高校生活の3年間を過ごすことが、自分の可能性を引き出し、最大限に伸ばすことに繋がると思います。高校3年間は人生の土台をつくる大切な時期です。ぜひ自分が成長できる環境を選んでほしいと思います。そして、いろいろな学校を見て、感じて、そのうえで南平高校を選んでいただけたら、大変うれしく思います。
千葉「行きたい」という強い気持ちが、最後の最後まで頑張り抜くすべての原動力になるのですね。本日は大変熱く、そして深いお話を本当にありがとうございました。

都立 南平高等学校







住所 〒191-0041 東京都日野市南平8-2-3
電話 042(593)5121
FAX 042(593)1442
都立南平高等学校へのアクセス
京王線南平駅より徒歩約10分