文武両道から「次世代の学び」へ――進化し続ける国分寺高校の教育

難関国公立大学への進学実績を伸ばしつつ、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校として理数教育にも注力する東京都立国分寺高等学校。勉強だけでなく、「木もれ陽祭」をはじめとする学校行事や部活動にも全力で取り組む同校の強みとは一体どこにあるのでしょうか。今回は、合同会社キャンパス代表の千葉が、勝嶋憲子校長先生に同校の教育理念や独自の「本物体験」、そして生成AIなどを取り入れた「次世代の学び」に向けた今後の展望について深くお話を伺いました。
〜教育対談開始〜
モンゴルでのSSH研修――「本物体験」が育む文理融合の視点
千葉本日はよろしくお願いいたします。学習塾Canpass / 個別指導Polarissを運営しております、代表の千葉と申します。早速ですが、先日モンゴルに行かれていたとお伺いしました。国際交流の一環かと思ったのですが、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の取り組みだったそうですね。
勝嶋校長はい、よろしくお願いいたします。そうなんです、SSHの予算枠を活用してモンゴルへ行ってきました。SSHも3年目となり、参加する生徒の顔ぶれも変わってきました。当初は生物部の生徒が中心でしたが、今年は「男子バスケ部です」「陸上競技部です」「水泳部です」といった、多様な生徒たちが参加してくれたんです。定員を上回る応募があったため、担当の教員と相談し、今回は28名全員を連れて行くことにしました。生物系だけでなく、幅広い層に興味が広がってきたと感じています。
千葉それは素晴らしいですね。モンゴルではどのような体験をされたのでしょうか?
勝嶋校長移動だけでも大冒険でした。当初、ゴビ砂漠に行く予定でしたが、飛行機が取れず、ウランバートルからマンダルゴビという場所まで、10時間以上かけてバスや4WDで移動しました。現地の方にも「高校生がマンダルゴビに入るのは初めてではないか」と言われたほどです。
事前研修で学んだ語学(モンゴル語)を使って、遊牧民の歴史や文化・生活も肌で感じました。季節ごとに移動を繰り返す遊牧民、ガゼルの大群等、夏の暮らしを見てきました。草原の中で羊やヤギ、馬、ラクダといった家畜を観察し、ゲルに泊まって満天の星や流れ星を見る。食事は毎回羊肉の伝統料理でした。生徒達は、草原や砂漠で植生調査も行い、1メートル四方のエリアにどんな草花が生えているか、を熱心に分析していました。
モンゴルは、人類史上最大規模の帝国を築いている国です。どこまでも続く大草原で、かつて西へ東へと騎馬軍団を繰り出し、史上空前の世界帝国をうちたてました。13世紀のチンギス・ハーンの時代は、西はヨーロッパ、東は朝鮮半島まで及びました。ウランバートルの国立博物館や自然史博物館で歴史、遊牧文化、自然環境、恐竜化石について学習しました。まさに、モンゴルの大自然を舞台に現地でしか得られない生物・環境等の理数教育と歴史・文化を掛け合わせた「文理融合」の学びです。
千葉机上の学習だけでなく、現地の暮らしや文化を含めて体感する。まさに「本物体験」ですね。
勝嶋校長おっしゃる通りです。本校は「本物体験」を非常に大切にしています。7月22日から2泊3日で、「人と自然の関係を学ぶ」ことをテーマに北陸研修に行き、黒部ダムの多大な努力を費やして建設した巨大ダムの成り立ちや地形、立山の氷河地形や高山植物群落、能登地震の防災の大切さを学んできました。理系人材の育成はもちろん重要ですが、科学だけでなく歴史や地形など、文理の枠を超えた総合的な学びを提供したいと考えています。
勉強・学校行事・部活動の3本柱――「木もれ陽祭」が紡ぐ縦のつながり
千葉国分寺高校様というと、難関国公立や難関私大への高い進学実績を出しながら、SSHでの理数教育、さらに部活動や「木もれ陽祭」などの行事にも非常に力を入れているイメージがあります。校長先生は、学校運営においてどのような教育理念を大切にされていますか?
勝嶋校長本校のパンフレットにも掲げている「高い学力」「感動と充実」「高い志と理想」という三条項が、すべての土台になっています。高い学力を身に付けることは大前提ですが、同時に学校行事や部活動を大切にし、自主自立の精神でチャレンジする。これからのAI・DX時代を生き抜く人材を育成するためには、勉強、学校行事、部活動の「3本柱」だけにとどまらない、それ以上の豊かな経験が必要だと考えています。
千葉生徒さん達は本当に忙しい日々を送っていらっしゃると思いますが、そのモチベーションはどのように維持されているのでしょうか。
勝嶋校長本校の生徒は、勉強も行事も部活動も一切手を抜きません。いじめなどのトラブルに関わっている暇がないくらい、集中して学校生活を送っています。
その原動力の一つが、「縦のつながり」です。例えば、本校名物の「木もれ陽祭」は、4月に入学した段階で新入生が縦割りの団(赤、青、白などのクラス別8色)に分かれ、先輩達と顔合わせをします。部活動でのつながりも非常に太いですね。
千葉先輩の背中を見て育ち、仲間と励まし合う環境があるのですね。
勝嶋校長ええ。教師とのつながりも同様です。教員が丁寧に指導し、生徒がそれに応えて質問に来る。そうした人間同士の触れ合いや、素直にアドバイスを吸収する素朴さが、国分寺の生徒の良さです。自分を大きく見せようと背伸びするのではなく、ありのままの自然体でいられるからこそ、安心していろいろなことに挑戦し、大きく伸びていくのだと思います。
自由な発想がイノベーションを生む――生徒主体の探究活動

千葉SSH校として、探究活動にも力を入れていらっしゃいますね。生徒さんたちの様子はいかがですか。
勝嶋校長本校は生徒の自由や主体性を重んじており、上から「あれはダメ、これはダメ」と押さえつけることはしません。だからこそ、生徒からは非常に面白い発想が出てきます。
例えば、先日神戸で行われたSSHの研究発表会では、本校の生徒が「津波の被害をリアルタイムで確認できるアプリ」を開発して発表しました。津波避難を再現した大規模なシュミレーションをして、避難意思決定ロジックを関連付け、これをスマートフォンに安全な避難ルートを導き出し、アプリで示めします。これには各大学の先生方も絶賛で、「もし企業が話を聞いたら商品化できるレベルだ」と言われたほどです。
千葉高校生のうちからそこまで実践的なアプリを開発できるとは驚きです。
勝嶋校長他にも、「自転車が車道から歩道の縁石に乗り上げる時、最小入射角度で進入すれば転ばないか」を研究した生徒もいました。ほとんどの生徒が自転車通学をしている本校ならではの、生活に密着したユニークな視点ですよね。型にはめず、自由な発想を後押しする環境が、こうした探究心を育んでいるのだと思います。
デジタルとリアルの融合――「新たな教育のスタイル」実施校としての挑戦
千葉国分寺高校ならではの、他校にはない次世代に向けた独自の取り組みがあれば教えていただけますでしょうか。
勝嶋校長現在、東京都教育委員会が進めている「新たな教育のスタイル」の実施校として、本校が前倒しで指定を受けました。令和14年度からの次期学習指導要領を見据え、教育課程の柔軟化、探究的な学びのさらなる進化、そしてデジタル・情報教育の推進を柱としたプロジェクトです。
具体的には、私たちがこれまで大切にしてきた「本物体験」や行事と、生成AIなどのデジタル技術、そしてグローバル教育を掛け合わせ、予測困難な世界で生き抜く「自立した学習者」を育成することを目指しています。
千葉AIやデジタル領域にもいち早く対応されるのですね。
勝嶋校長はい。今年度中には校内に「デジタル学習室」を2部屋新設します。一つは個人で映像教材などを視聴できる部屋、もう一つはグループで画面を見ながら議論し、探究を深められる部屋です。生徒は全員自分の端末を持っていますから、それをつないで効果的に学習を進められます。
また、LMS(学習管理システム)を導入し、学習時間や進捗を管理しながら、デジタルとリアルの学びを組み合わせて自己のデザイン力を高めていく予定です。
千葉グローバル教育についてはいかがでしょうか?
勝嶋校長これまで本校は国内に目が向きがちでしたが、これからは国際的視野が不可欠です。本校定番のオーストラリア・ゴスフォード校研修に加え、東京都の事業を積極的に活用し、昨年度はマレーシアや今年度はイギリスへの海外研修プログラムを実施しました。定員を大幅に上回る応募があり、生徒たちの関心の高さを感じています。今後は、さらに海外との交流枠を広げていきたいですね。
塾と学校の連携、そして求める生徒像
千葉これからますます受験に向けた指導にも力を入れられると思いますが、我々のような民間の学習塾は、どのように学校と連携・協力していくべきだとお考えでしょうか。
勝嶋校長私たちは同じ教育者として、切り離して考えるべきではないと思っています。学校の授業がベースであることは間違いありませんが、生徒一人一人の習熟度やペースは異なりますから、塾の存在は大いに活用すべきです。
生徒の進捗状況や、塾での学習の様子などの情報を共有できれば、お互いにアプローチしやすくなり、結果として生徒がより大きく伸びるはずです。情報交換の機会を持てれば、学校としても非常にありがたいですね。
千葉ありがとうございます。私たちも、ぜひ学校と足並みを揃えて生徒たちをサポートしていきたいと考えています。
ちなみに、国分寺高校様から見て、どのような中学生に入学してきてほしいとお考えですか?
勝嶋校長先ほど申し上げたように、学校は勉強だけをする場所ではありません。勉強も、学校行事も、部活動も、何事にも一生懸命に取り組める生徒さんに来てほしいですね。日々の努力の積み重ねを惜しまない、素直な生徒さんをお待ちしています。
千葉少し話題は戻りますが、「木もれ陽祭」の体育祭の実施時期を9月から5月・6月へ変更されたとお聞きしました。このあたりも、生徒が全力で取り組める環境づくりの一環でしょうか。
勝嶋校長その通りです。近年は9月でも命に関わるような猛暑が続いています。生徒たちは応援合戦などで全力を出し切りますから、熱中症のリスクを考慮し、気温が上がりきる前の5月・6月に体育祭(競技杯のみ)を移行するという苦渋の決断をしました。
第一志望の実現に向けて――前倒しの進学指導と教員の意識改革
千葉進学実績の向上に向けた今後の展望をお聞かせください。
勝嶋校長今春の大学入試では、現役での大学進学率が約81%となり、難関国公立大学への合格者数も増加しました。特に早慶上理やGMARCHといった難関私大への合格者数が大きく伸びています。
これをさらに確固たるものにするため、現在の3年生には、高校2年生の3学期を「3年0学期」と位置づけ、冬季集中セミナーなどで早期から受験への意識付けを行いました。模擬試験の結果も学年集会で毎回共有し、生徒と教員が一体となってスクラムを組んで受験に向かっています。
千葉生徒さんたちの意識もかなり変わってきているのですね。
勝嶋校長ええ。そして何より重要なのは教員の意識改革です。旧態依然とした教え込みの授業ではなく、生徒主体の授業へと転換を図っています。若い教員を中心に、学校全体が大きく変わりつつあります。
本校は「スポーツ推薦枠(文化・スポーツ等特別推薦)」を設けず、あくまで自校作成問題を突破して入学してくる生徒たちの学力とモチベーションを大切に育てていく方針です。
千葉なるほど、高い志を持った生徒が集まるからこそ、お互いに刺激し合えるのですね。最後に、中学生や保護者の方へのメッセージをいただけますでしょうか。
勝嶋校長まずは、ぜひ直接学校へ足を運んでいただき、在校生の表情や学校生活の様子を見ていただきたいです。都立高校はどこも似ているように見えるかもしれませんが、学校ごとにカラーは全く異なります。本校の「学校行事も部活動も全力でやる」という校風が自分に合うかどうか、肌で感じてください。
また、自校作成問題校ではありますが、恐れずにチャレンジしてほしいと思います。説明会では問題の解説なども行っていますので、ぜひここから対策を始めてみてください。国分寺高校という「青春の庭」で、充実した高校生活を送りたい皆さんの入学を、心よりお待ちしております。
千葉勉強、学校行事、部活動、そして新たなデジタル教育やグローバルリーダー育成の取組と、すべてにおいて高みを目指す国分寺高校のこれからが本当に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

都立国分寺高等学校

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