「自学自習」の風土と「本質を見極める力」が未来を拓く――武蔵野北高校が目指す教育の形

共通問題のトップ校として高い進学実績を誇りながら、部活動や学校行事にも全力で取り組む「文武両道」を体現している東京都立武蔵野北高等学校。今回は、合同会社キャンパス代表の千葉が同校の校長先生を訪問。学校全体に根付く「自学自習」の風土や、予測困難な時代に子どもたちに求められる力、そして学校と学習塾がどのように連携していくべきかについて、教育の最前線に立つ二人が深く語り合いました。
〜教育対談開始〜
どこでも学びに向かえる「自学自習の風土」と、「受験は団体戦」の精神
千葉本日はお忙しい中、ありがとうございます。学習塾キャンパスと個別指導ポラリスを運営しております、合同会社キャンパスの千葉と申します。早速ですが、武蔵野北高校様は難関大学への高い合格実績を誇るだけでなく、他校様と比べても「文武両道」を体現し、部活動や学校行事にもかなり力を入れていらっしゃるイメージがあります。実際の学校のご様子はいかがでしょうか?
鈴木校長とにかく本校の生徒たちは明るくて、何事にも意欲的です。そこが一番の大きな魅力だと思います。そしてもう一つの大きな特徴が、この武蔵野北に 3 年間いると、自然と「自分で勉強する姿勢」が身についてくることです。
本校には 78収容可能な大きな自習室があるのですが、それだけでなく、1 階の自習室の前や 2 階の渡り廊下、さらには校舎の玄関前や光庭の目の前にも自習用の机がずらっと並んでいます。
定期考査前や受験間近の時期はもちろん、夏休みや日常的にも、生徒たちがそこに自然と座って自学自習をしているんです。また、部活動や学校行事も盛んで、部活動加入率は兼部している生徒もいるので、100%を超えています。
千葉先ほど廊下を拝見しましたが、本当にたくさんの生徒さんがごく自然に机に向かっていましたね。そのような素晴らしい風土は、どのようにして作られているのでしょうか?
鈴木校長私たちは進路指導において「受験は団体戦だ」とよく伝えています。一人で黙々と勉強するだけではなく、みんなで教え合ったり、切磋琢磨したりしながら、学校全体で夢の実現を果たしていく。そうした空気が武蔵野北には根付いているのだと思います。
また、私は学校説明会でも盛んに「高校生活は勉強だけじゃない」とお伝えしています。習い事でも部活動でも委員会活動でもいい。本分の学習以外のところでも、集中して打ち込む経験を持ってほしいと思っています。
そして学習と部活動や委員会活動はそれぞれ分立しているわけではなく、生徒の中で連携して成長に直結していくものと考えています。それが「充実した3年間を送れた」という実感に繋がりますし、教員も一丸となってそういう環境づくりに力を入れています。
千葉「受験は団体戦」という言葉、とても素敵ですね。一人で最後まで走り切るのは難しいことですから、周りに頼り、支え合いながら頑張れる環境があるというのは、生徒さんにとって非常に心強いと思います。
生徒一人ひとりに寄り添う「面倒見の良さ」のルーツ
鈴木校長高校生活というのは、人生の大きな土台を作る一番大切な時期です。小中学校までは同じ地域の子どもたちが集まりますが、高校はある意味で初めて自分の地域外の人たちと出会い、多様な考えに触れ、人間形成が図られていく場所です。だからこそ、「3年間充実した学校生活を送る」ということが、その後の人生の大きな糧になるのだと考えています。
千葉先ほどの「自学自習」のお話にも通じますが、生徒さんたちが主体的に学べる空気感を作っていくために、先生方はどのようなアプローチをされているのでしょうか?
鈴木校長本校の教員は非常に面倒見が良いんです。そのルーツは、昭和 54 年の開校当時に遡ります。当時の都立高校は 8 学級や 9 学級といった人数の多い学校が主流でしたが、武蔵野北高校は「地元の生徒が通える新しい都立高校を作ってほしい」という市民の声から生まれ、6 学級の比較的少人数でスタートしました。
もともとが大きすぎる規模ではなかったため、教員の目が一人ひとりの生徒に届きやすい。教員と生徒が一体となって自己実現を果たしていくという伝統が、今も脈々と受け継がれています。
千葉なるほど、少人数でスタートした歴史が「面倒見の良さ」の土台になっているのですね。自学自習といっても、自分たちだけでは解決できない問題もあると思います。先生方が親身に寄り添ってくれる環境があるからこそ、生徒さんも安心して頼ることができるのですね。
鈴木校長そうですね。生徒から質問があれば、教員が一緒に座って教えている姿も日常的に見られます。教員自身も、武蔵野北高校の教員であることに誇りを持ち、「この学校はいい学校だ」と思って着任してくれている方々が多いのです。教員のそうした前向きなモチベーションは、間違いなく生徒たちにも伝わっていると思います。素晴らしい教員が揃っていることも本校の大きな自慢で、本当にありがたいですね。
情報社会を生き抜くための「一度立ち止まって考える力」
千葉少し視点を変えたお話を伺わせてください。近年、生成 AI が急速に普及し、グローバル化も進むなど、将来の予測が難しい時代だと言われています。これからの社会を生きる子どもたちにとって、どのような力が必要だとお考えでしょうか?
鈴木校長一言で言えば「本質を見極める力」だと思います。今は SNS などを通じて、本当の情報も嘘の情報も大量に流れてきます。AI などのテクノロジーは助けにはなりますが、最終的にそれが正しいかどうかを判断し、自分の進むべき道を決定するのは自分自身です。
では、そのためには何が大切か。現在教育界で盛んに使われている能力や難しい言葉で片づけてしまうのは簡単ですが、敢えてそれを避けて一つだけ挙げさせていただくと、私は「本当にそうかな?」と、一度立ち止まって考える気持ちを持つことが大切だと考えています。
千葉「本当にそうかな?」と立ち止まる力、ですか。
鈴木校長ええ。何か新しい情報に触れたときや、周りの人から何かを言われたときに、鵜呑みにするのではなく「本当にそれで正しいのかな?」と一瞬考えてみる。それは決して何でも疑ってかかるという意味ではなく、自分の中で一度思考を巡らせてみるということです。
これは情報の判断だけでなく、人間関係でも言えると思います。誘惑に対して何も考えずに同調して流されてしまうのか、それとも「ちょっと待てよ?」という思いに至るか、また、会話一つとってみても、ただ思ったままに言葉を発してしまうのか、それとも「相手はどう思うだろうか」と一度立ち止まって考えられるか。そのワンクッションを持てるかどうかが大切で、このようなことがたくましく生きることに直結していくのだと思います。
千葉おっしゃる通りですね。自分の頭で考えを巡らせないと、情報にも周囲の空気にも流されてしまいます。「疑う」のではなく「一度自分で考える」というプロセスが、人間関係も含めたすべての基盤になるというお話、非常に深く納得いたしました。
調べ学習で終わらせない、真の「探究活動」への挑戦

千葉そうした「立ち止まって考える力」や「本質を見極める力」を育むために、学校として独自に取り組まれていることはございますか?
鈴木校長力を入れているのは「探究活動」です。1 年生で探究の基礎を学び、2 年生では 4000字の論文執筆などを行っています。
探究活動において最も重要なのは、「単なる調べ学習で終わらせない」ということです。調べてわかった気にならず、実際に仮説を立てて検証してみる。もしダメだったら立ち止まり、振り出しに戻ってまた考える。このプロセスこそが探究です。
千葉「調べ学習で終わらせない」というのは、まさに先ほどの「一度立ち止まって考える」ことを実践する場ですね。
鈴木校長その通りです。ただ、生徒たちに探究の意義を理解させ、自分の興味関心と結びつけるのは時間もかかりますし、難しい部分でもあります。そこで本校では「探究支援部」という専門の部署を立ち上げ、より本格的なサポートを始めました。
また、本校は東京都から「Tokyo Metropolitan Global Education Network School Premier20)」という国際理解教育の推進校に指定されています。
都立の名だたる進学校と共に、グローバル人材の育成を期待されている枠組みです。これを活かして、海外研修や東京都の「Global Visit」への参加(昨年はヨルダン、今年はオーストラリアへの派遣)、韓国との交流、留学生の受け入れなど、実践的な国際交流も探究活動の一環として積極的に行っています。
千葉机上の勉強や英語力だけでなく、実際にリアルな体験として交流を持てるのは素晴らしい環境ですね。
鈴木校長さらに高大連携にも力を入れており、東京学芸大学、東京農工大学、東京都立大学など、生徒たちが将来進学する可能性の高い大学の先生や大学院生に来ていただき、探究活動の論文を見てもらったり、大学での研究について講演していただいたりしています。専門家の視点が入ることで、探究活動に一段と深みが出てきています。
このような探究活動を日頃の学校生活と連動していくことで、3 年間の学校生活全体が日々探究活動になればと考えています。
千葉私自身、塾で生徒の進路相談に乗る際にも感じますが、大学のホームページやパンフレットの文章を読んだだけでは、子どもたちはなかなか実感が湧きません。実際に大学の先生から直接お話を聞く機会があるというのは、生徒たちのモチベーションアップに絶大な効果があると思います。
データ分析の徹底と、部活動を支える手厚いサポート
鈴木校長進学指導推進校としての本校のミッションは、当然ながら生徒たちの「夢の実現」です。本校では 2 年生までは文系・理系をはっきりと分けず、国公立大学の受験に対応できるカリキュラムを組んでいます。結果として、卒業生の約4人に 1 人が国公立大学に現役合格し、約 3 分の 2 が GMARCH 以上の大学に現役で進学しています。
千葉素晴らしい出口の実績ですね。生徒さんの頑張りはもちろんですが、学校としてのバックアップ体制も影響しているのでしょうか?
鈴木校長「データに基づく進路指導」を大切にしています。模試が終わると、業者からのデータ分析を待つだけでなく、各教科の担当教員が自ら分析を行います。「この分野の得点率が低いが、授業では今後このようにフォローしよう」といった具体的な対策を立て、教員間で共有し、日々の授業に直結させています。
また、大学入学共通テストにおいても、他との比較も含めた各教科・科目ごとの分析を行い、冊子にして今後の対応に向けて教員間で共有しています。現場の教員が自ら分析することで、指導の手厚さは大きく変わります。
千葉業者任せにせず、先生方が直接授業に落とし込んでいらっしゃるのですね。進学面だけでなく、部活動はいかがですか?
鈴木校長部活動にも非常に力を入れています。陸上競技部は昨年インターハイにも出場したレベルで、男子バスケットボール部も都大会ベスト32に進出するなど、他の部活動においても実績が出てきました。
ここで重要なのは、生徒が全力で部活動に取り組めるよう、教員の負担も考慮しながら指導体制を整えることです。本校では「部活動指導員」を多数配置し、教員が休める日を確保したり、専門的な指導を受けられるようにしたりと、働き方改革と生徒への手厚いサポートを両立できるようにしています。教員が心身ともに充実して働ける環境があってこそ、生徒に良い還元ができると考えており、そのために学校も日々努力しているところです。
学校と学習塾が連携し、子どもたちの「隙間」を埋める
千葉私たちのような民間の学習塾も、学校様と同様に一人ひとりの子どもたちをしっかり見ていきたいと考えております。校長先生から見て、学習塾に期待する役割や連携のあり方について、どのようにお考えでしょうか。
鈴木校長私自身の子どもも塾でお世話になりましたが、学校と塾は「互いに補完し合う関係」だと思っています。学校の授業がメインであっても、集団授業の中ではどうしても質問しきれなかったり、「こんな細かいことを聞いていいのかな」と遠慮してしまったりする生徒もいます。また、ハイレベルな大学を目指す生徒が「この分野の具体的なアプローチの仕方がわからない」と悩むこともあるかもしれません。
そうした学校だけでは手が届きにくい「隙間」の部分を、塾で丁寧にサポートしていただけるのは非常にありがたいことです。
千葉学習面での「隙間を埋める」サポートですね。
鈴木校長それだけではありません。塾の先生との出会いや、塾で学んだちょっとした深い知識がきっかけで、「この教科が面白くなった」「この系統に進もう」と目覚める子どももたくさんいます。学校だけでなく、塾という別のコミュニティからのアプローチが、子どもたちの学力向上や知的好奇心を大きく刺激してくれる。そうした役割を、私たちも民間の方々に大いに期待しています。
千葉そうおっしゃっていただけると大変励みになります。学校様と私たちがそれぞれの強みを活かし、手を取り合って子どもたちの成長を支えていければと思います。
受験生・保護者へのメッセージ
千葉本日は大変貴重なお話をありがとうございました。最後に、これから志望校選びをする中学生やその保護者の皆様へ、メッセージをお願いいたします。
鈴木校長私は多摩地区には縁があり、開校当時から武蔵野北高校を知ってはいましたが、改めて自分が校長として着任してみて、「本当に「率直に、いい学校だな」と実感しています。子どもたちが素直で明るく、そして教員が温かい。
高校生活は、「3 年間の充実した学校生活を送ること」と、「卒業後の進路実現を果たすこと」の両輪が大切です。本校は、その 2 つに向けて教職員一丸となって取り組んでいます。ぜひ一度学校に足を運んでいただき、生徒たちの姿や武蔵野北高校の雰囲気を感じていただければ幸いです。
千葉「率直にいい学校」。その言葉に、今日お伺いした魅力のすべてが詰まっていると感じました。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

「啐啄同時」のタイミングと、学習塾への期待
受験生・保護者の皆様へメッセージ
都立武蔵野北高等学校

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